「カスハラ対策は、方針を決めて周知すれば一区切り」。そう考えている現場は少なくありません。ですが2026年7月に公開された意識調査では、対策の”有無”以前に、多くの現場でまだ対策そのものが手つかずであること、そして対策していても録音・録画のような技術的な対策はごく一部にとどまっていることが示されました。この記事では、調査結果の中身を確認しながら、対策の”種類”をどう考えればよいかを整理します。

この記事でわかること

  • 2026年7月公開の意識調査で示された、カスハラ対策の実施状況
  • 対策の中でも「方針・マニュアル」と「録音・録画等の技術的対策」の普及率の違い
  • 対策が「ない」ことが、現場の従業員にどう影響しているか

接客・窓口業務従事者の5割超が「対策なし」

株式会社Channel Corporationが2026年6月18日〜22日に実施し、同年7月6日に公開した意識調査(接客・窓口・カスタマーサポート等の業務従事者497名対象、対面店舗・窓口67%、電話・メール・チャット等29%、その他4%)によれば、「会社が導入しているカスハラ対策」について尋ねたところ、最も多かった回答は「なし(51.7%)」でした。過半数の現場が、対策のない状態で顧客対応にあたっていることになります。回答者の67%を対面店舗・窓口が占めるため、コールセンターや医療・介護・自治体窓口の実態とは構成が異なる可能性がある点には留意が必要です。

調査主体はAIチャットボット製品を提供する企業で、この調査は同製品の紹介を含む文脈で公開されています。本記事では、そのうち対策実態と従業員への影響に関するデータを参照します。

導入されている対策の内訳を見ると、「基本方針の社内外への周知(27.4%)」「カスハラ対策マニュアルの作成・周知(24.9%)」が上位を占める一方、録音・録画やAIシステムなどの技術的・環境的対策は10%未満にとどまっています。方針やマニュアルの整備は進みつつあるものの、現場で実際に対応する際の技術的な裏付けは、まだ多くの現場で手薄なままだとうかがえます。

対策の「有無」だけでなく「種類」で見る

この結果は、カスハラ対策を一括りにできないことを示しています。方針の周知やマニュアルの整備は、組織としての姿勢を示し、対応の手順を揃えるうえで欠かせません。ただし、実際の電話や窓口対応の場面で「何が起きたか」を後から確認できるかどうかは、方針やマニュアルだけでは担保できません。

通話録音のような技術的対策は、この「起きたことを確認できる状態にしておく」部分を担います。方針・マニュアルと、録音などの技術的対策は、どちらかで足りるものではなく、役割が異なる二つの層と捉えたほうが実情に近いといえます。

対策が「ない」ことの影響

同調査では、「カスハラ対策がなされなかったときの影響」も尋ねています。最も多かったのは「モチベーションが下がる(43.5%)」で、次いで「会社(組織)への不信感が募る(31.8%)」「退職したくなる(28%)」「顧客対応全般が怖くなる・恐怖心が増す(27.4%)」と続きました。

特にメール・CS窓口担当では、「モチベーション低下」が51.8%、「退職意欲の発生」が33.9%と、全体平均を上回っています。

録音は、対応の経緯を組織で共有するための材料になる

通話録音を導入する目的は、証拠を残すことだけではありません。録音があれば、対応した本人の記憶や説明に頼らず、経緯を組織で確認できます。これは、正当なクレームとカスハラの境界が曖昧な場面(これってカスハラ?で判断基準を整理しています)や、対応後に上長へ引き継ぐ場面で、特に効いてきます。

録音を「証拠を残す」対策として導入する場合の考え方は通話録音は違法?証拠の扱い、記録・証拠の残し方全般はカスハラの記録・証拠の残し方で整理しています。自社の電話環境にどう組み込むかで迷う場合は、後付け・オンプレ・クラウドの3形態を比較した通話録音システムの選び方が手がかりになります。

まとめ

  • 2026年7月公開の意識調査では、接客・窓口業務従事者の51.7%が「勤務先にカスハラ対策なし」と回答した。
  • 対策していても、方針・マニュアルの整備(2割台)に比べ、録音・録画やAIシステムなどの技術的対策は10%未満にとどまる。
  • 対策が「ない」ことは、モチベーション低下(43.5%)や退職意欲(28%)など、現場の従業員に直接的な影響を与えている。
  • 方針・マニュアルと、録音などの技術的対策は役割が異なり、両方を組み合わせて初めて対応の実効性が高まる。

自社の対策が方針・マニュアルにとどまっていないか、技術的な裏付けまで整っているかを確認したい場合は、現在の電話・窓口環境と対応フローを整理したうえでご相談ください。

本記事で紹介した数値は、株式会社Channel Corporationが2026年7月6日に公開した意識調査結果によるものです(「Channel Corporation調べ」)。調査の詳細・最新の情報は同社の公表資料でご確認ください。本記事は一般的な情報の整理であり、法的助言ではありません。