2026年10月から、改正労働施策総合推進法により事業主のカスタマーハラスメント(カスハラ)対策が義務化されます。義務化に向けて方針の明確化や相談体制の整備、そして録音・録画といった環境づくりを進めようとすると、どうしても一定の費用が発生します。「やらなければならないのは分かるが、コストが気になる」——そう感じる中小企業は少なくありません。
そこで知っておきたいのが、カスハラ対策に使える助成金・補助金・奨励金です。自治体を中心に、録音環境やAIシステムの導入を後押しする制度が登場・拡大しています。この記事では、現時点で確認できる代表的な制度と、申請にあたっての一般的な留意点を整理します。
なぜ今「助成金」なのか
義務化は、企業に新たな対応を求めるものです。マニュアルや相談窓口の整備は社内の工数で進められても、録音・録画の仕組みやシステムの導入には機器・サービスの費用がかかります。とりわけ体力に余裕のない中小企業にとって、この初期費用は対策を先延ばしにする理由になりがちです。
行政側もこの点を踏まえ、対策費用の一部を支援する制度を設け始めています。義務化の文脈で「対策にお金がかかる」課題と、「その費用を補助する」制度がかみ合いつつあるのが、いまのタイミングです。義務化で企業が具体的に何を講じるべきかは、2026年10月の義務化で企業が講ずべき措置で整理しています。
東京都の企業向け奨励金(定額40万円)
代表的な制度が、東京都の「カスタマーハラスメント防止対策推進事業」における企業向け奨励金です(運営=東京しごと財団)。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 都内に拠点を置く、常時雇用する労働者が300人以下の中小企業等 |
| 要件 | カスハラ防止のマニュアル整備に加え、下記3類型のいずれかを実施 |
| 取組3類型 | ①録音・録画環境の整備 ②AIを活用したシステム等の導入 ③外部人材の活用 |
| 支給額 | 定額40万円 |
| 規模 | 3年間で1万社への支給を予定 |
| スケジュール | 2026年度第1回の事前エントリーは2026年6月25日から(受付枠を超えた場合は抽選) |
ポイントは、マニュアル整備だけでは要件を満たさず、録音・録画、AI導入、外部人材のいずれか具体的な取組とセットで求められる点です。定額40万円という分かりやすい金額が設定されている一方、事前エントリーの受付枠を超えた場合は抽選となるため、エントリーすれば必ず支給される性質のものではありません。最新の対象・要件・スケジュールは公式ページで必ずご確認ください。
名古屋市の補助金
東京都以外でも、自治体独自の支援が始まっています。名古屋市の「中小企業カスタマーハラスメント対策支援事業」(運営=名古屋産業振興公社)では、通話録音装置の導入費などが補助の対象とされています。
補助率は2分の1以内、限度額はおおむね5万〜30万円とされていますが、対象経費や具体的な要件は制度ごとに細かく定められています。申請を検討する際は、名古屋市の公式ページで最新の内容を確認してください。
このほかの自治体でも、同種の制度の導入・拡大が進んでいます。ただし制度名や金額は地域・年度によって異なるため、確証のない情報をうのみにせず、お住まいの自治体・年度の最新制度を一次情報で確かめることをおすすめします。
「録音・録画」「AI導入」が対象に含まれる意味
ここまで見てきたとおり、東京都の奨励金では「①録音・録画環境の整備」「②AIを活用したシステム等の導入」が、名古屋市の補助金では「通話録音装置の導入費」が、それぞれ対象取組として明示されています。
つまり、カスハラ対策として通話録音の仕組みを整えることが、これらの制度の対象取組に該当しうるということです。録音は、被害を担当者個人の記憶に閉じず、会社が事実を確認・判断・対応するための材料になります。なぜ録音が現場を変えるのかは、録音という対策でくわしく解説しています。
当社(フォースネット)が提供する通話録音の仕組みも、こうした「録音・録画環境の整備」に位置づけられる取組です。具体的な実装は製品(録音の実装)をご覧ください。ただし、ある製品やサービスが各制度の対象として認められるかどうかは、最終的に各制度の要件と審査によって決まります。特定の製品の導入が支給・採択を保証するものではない点にご注意ください。
申請にあたっての一般的な留意点
助成金・補助金・奨励金は、便利な仕組みである一方、いくつかの前提を理解しておく必要があります。
- 年度・予算で変わる — 多くの制度には予算の上限や受付期間があり、年度ごとに内容が見直されます。今年度の要件が翌年度も同じとは限りません。
- 抽選・先着の可能性 — 東京都の奨励金のように、受付枠を超えると抽選になる制度があります。エントリー=支給ではありません。
- 地域で異なる — 利用できる制度は、企業の所在地や事業内容によって変わります。
- 一次情報で確認する — 対象・要件・金額・スケジュールは、必ず各制度の公式ページや窓口で確認してください。
なお当社は、制度の情報提供と、対象取組に該当しうる録音製品の提供を行う立場です。申請の代行や、支給・採択を保証するものではありません。本記事は法的・行政手続上の助言ではなく、一般的な情報提供を目的としています。具体的な申請可否や手続きは、各制度の運営機関や専門家にご相談ください。
カスハラ対策に使える制度の概要は、助成金・補助金のページでもまとめています。
まとめ
- 2026年10月の義務化に向け、録音・AI導入など対策費用を支援する助成金・補助金・奨励金が登場・拡大している。
- 東京都の企業向け奨励金は、都内の中小企業等を対象に、録音・録画/AI導入/外部人材のいずれかの実施で定額40万円(受付枠超過時は抽選)。
- 名古屋市など自治体独自の補助金もあり、通話録音装置の導入費などが対象になりうる。
- 「録音・録画」「AI導入」が対象取組に含まれるため、通話録音の仕組みは対象取組に該当しうるが、支給・採択は各制度の審査による。
- 制度は年度・予算・抽選・地域で変わる。必ず一次情報で確認を。
※2026年6月時点。最新・正確な内容は各公式でご確認ください。本記事は法的・行政手続上の助言ではなく、一般的な情報提供を目的としています。