社労士・専門家の方へ

カスハラ義務化で顧問先から聞かれる、
録音とAIの事実。

2026年10月1日のカスハラ防止措置義務化を控え、顧問先から通話録音の要否、生成AI連携の可否、東京都奨励金の活用可否について相談を受ける社労士や専門家の方が増えています。フォースネット株式会社では、機器提供元の立場から、法令・指針の要点、機器と運用規程の境界、AI活用の条件、当社との協業の前提を整理して公開しています。

1. 法令

10月1日以降、顧問先から聞かれること

改正労働施策総合推進法は2026年10月1日に施行され、全企業を対象にカスタマーハラスメント防止措置が義務付けられます。違反した事業主は、行政による報告徴求、助言、指導、勧告、公表の対象となりますが、刑事罰が科されるものではありません。顧問先から「何をどこまで行えばよいのか」と問われた際、まず確認する基本は、厚生労働省の指針(令和8年厚生労働省告示第51号、2026年2月26日)が求める措置の内容です。

指針において事業主に求められている措置は、次の4点に整理されています。第一に、事業主の方針の明確化と就業規則や規程への反映。第二に、相談窓口の設計と相談担当者への研修。第三に、判断基準や対処手順、記録様式を定めた対応マニュアルの整備。第四に、事案発生時の迅速かつ適切な事後対応の手順と再発防止の取り組みです。

顧問先からは「通話録音装置を導入すれば義務を果たせるのか」「録音は義務化されたのか」という質問が寄せられますが、録音自体は法令上の義務ではありません。指針においても、録音は事案発生時の事実確認や事後対応における「対処の内容の例」として挙げられている手段の一つにとどまります。規程や体制の整備を伴わない機器の設置だけでは、指針が求める要件を満たしたことにはなりません。

通話開始時に録音を相手へ告知することも、法的な義務として定められているわけではありません。ただし、顧客の音声を個人データとして取り扱う以上、個人情報保護委員会Q&A(Q1-10)に基づき、利用目的の公表が求められます。実務上は、告知ガイダンスを流すかどうかの判断以前に、自社のプライバシーポリシーにおいて「通話録音により取得した個人情報の利用目的」が公表されているかどうかの確認が前提となります。

2. 分担

規程が求めることと、機器が担保できること

カスハラ対策として通話録音を取り入れる場合、社労士が支援する社内規程の策定と、録音機器が果たす役割との間には境界があります。この分担を曖昧にしたまま機器を導入すると、規程上は厳格な管理を定めていながら、機器の仕様では実現できないという運用の破綻を招きます。

例えば録音データの閲覧権限について、規程で役職別や部署別の閲覧範囲を定めたとしても、機器側が役割別権限の設定に対応していない場合があります。当社の通話録音装置「RecordingBOX」では、個別のアカウント発行と接続元IPアドレスの限定によってアクセスを制限しますが、役職ごとに操作権限を分ける機能はありません。誰がいつ音声を再生・閲覧したかという証跡も、機器側でログが残る仕様ではないため、閲覧を申請制にして台帳で管理するといった規程側の運用設計で担保する必要があります。

保存期間の管理については、機器側にあらかじめ日数を指定して自動削除を行う仕組みが備わっているため、社内規程で定めた保存期限と機器の設定値を一致させることで整合性を保てます。一方、通話相手に対する録音の事前告知に関しては、録音機器そのものにアナウンスを流す機能はありません。告知を行う場合は、既存の電話機やPBXが備える自動音声応答機能側で制御することになります。事案発生時の確認作業では、録音機器側の検索機能、話者別の文字起こし、上長へのPC通知といった機能で事実確認を進められます。

通話録音を取り入れたカスハラ対策の運用設計責任は、契約者である事業主にあります。機器ができることとできないことを見極め、運用ルールや社内体制でその間隙を埋める設計を支援することが、社労士の役割となります。

3. AI

「ドライブに置く」と「AIに渡す」は別の行為

顧問先からは、「通話録音データをChatGPTにアップロードして要約させても問題ないか」という相談が持ち上がることがあります。この際、多くの企業において「録音データをクラウドストレージ(ドライブ)に保存すること」と「外部の生成AIに入力すること」の違いが区別されないまま質問されている点に注意が必要です。

通話音声に顧客の氏名や連絡先などの個人データが含まれている場合、その音声を国外の事業者が提供するAIサービスに入力する行為は、個人情報保護法第28条に規定される「外国にある第三者への提供」に該当します。個人情報保護委員会は、2023年6月2日に公表した注意喚起において、個人データを含むプロンプトを入力する場合には、あらかじめ特定された利用目的の範囲内であること、および提供先の事業者が機械学習にデータを利用しないことを確認するよう求めています。

したがって実務上は、個人向けの無料プランや有料プランを入力に用いることは避け、入力データがモデルの学習に利用されない業務向けプラン(Team、Enterprise、API等)を契約した上で、データ処理契約に日本法と同等の措置が担保されていることを確認・記録します。また、「サービス向上のため」といった文言で取得していた通話録音を生成AIによる文字起こしや要約・分析に利用するのであれば、公表している利用目的の中にその用途を含める修正が必要となります。

顧問先が録音音声のAI連携を進めるために整える最小限の5点は、次のとおりです。

  1. モデルの機械学習にデータが利用されない業務向けプランの契約確認担い手:事業者
  2. 公表する利用目的に、AIによる文字起こし・要約・分析を行う旨を明記すること担い手:事業者と社労士
  3. AIに投入するデータの範囲、操作できる担当者、保持期間と削除手順をルール化する委託先の監督体制担い手:事業者と社労士
  4. 通話には従業員自身の音声も含まれるため、AI処理について社内に周知し、就業規則や規程へ反映すること担い手:社労士
  5. 相手方への録音告知の中に、AIによる処理を行う旨まで含めるかどうかの決定担い手:事業者

通話に記録される従業員側の音声管理や規程化は労務管理の範疇であり、社労士が深く関与する領域となります。

大部分の民間企業においては、社内の運用ルール策定と、ChatGPT等の業務向けプランの契約を組み合わせることで要件を満たせます。当社はこの段階でAI製品を売り込みません。ただし、社内規程、公共調達の要件、各種業法などの制約により、音声を国外の事業者環境へ送信できない自治体、医療法人、金融機関などの事業者に対しては、国内データセンターに設置した当社所有サーバー上でローカルLLMを稼働させる閉域AIオプションを個別見積で提供しています。当社では「いかなる構成でも外部送信は一切ない」といった画一的な説明は行わず、システム構成ごとに処理方式、対象範囲、外部送信の有無を確認して個別に案内しています。

4. 奨励金

奨励金の3要件を、社労士と当社で分担する

東京都が実施する「カスタマーハラスメント防止対策推進事業 企業向け奨励金」(公益財団法人東京しごと財団)は、都内中小企業のカスハラ対策を支援する制度であり、支給額は40万円です。対象となるのは、常時雇用する従業員が300人以下の都内中小企業等で、所定の要件を満たす必要があります。

この奨励金では、必須の取組として「カスタマーハラスメント対策マニュアルの整備」および「基本方針の社内・社外への周知」の双方が求められます。これに加えて選択の取組として、「録音・録画環境の整備」「AIを活用したシステム等の導入」「外部人材の活用」の3つのうちいずれか1つを実施することが要件となっています。令和8年度第2回募集の事前エントリー期間は、2026年10月23日(金)10時から11月6日(金)17時までです。受付件数は5,000件で、抽選により複数回に分けて支給申請の受付が案内される予定です。対象となる取組は、令和7年4月1日以降、事前エントリーまでに実施しておく必要があります。機器購入費が対象経費に含まれるかどうかは、年度ごとに特設サイトで公表される募集要領で確認します。

社労士が担える取組

マニュアルの整備、基本方針の策定と周知、外部人材としての研修実施。必須の取組と、選択の取組「外部人材の活用」に当たります。

当社が担える取組

選択の取組「録音・録画環境の整備」を、機器面から担います。1件の申請の中で分担します。当社は申請代行を行わず、採択を保証する立場も取りません。

東京都産業労働局が公表した「令和7年度 カスタマーハラスメントに関する実態調査」(企業アンケート4,727社、2026年3月31日公表)によると、対策に取り組んでいる企業の割合は38.5%にとどまっています。対策に取り組んでいる企業のうち、録音を整備している割合は31.4%です。取り組めていない理由としては、「判断が難しい」(29.6%)、「ノウハウ不足」(23.8%)が上位を占めています。何を基準にどう進めればよいのかという方針づくりの段階で停滞している実態があり、制度設計を担う社労士と、環境整備を担う事業者との連携が求められています。

注意

※2026年9月時点。対象・要件・抽選・予算・年度・地域により変わります。「必ずもらえる」ものではなく、申請代行・採択を保証するものでもありません。最新・正確な内容は各公式(東京しごと財団/名古屋産業振興公社 ほか)でご確認ください。

助成金・補助金のページ →

5. 事前確認

顧問先へ声をかける前の5つの確認

当社のRecordingBOXは、既存のPBX、電話回線、電話機を入れ替えることなく、通話を後付けで録音する装置です。標準構成(本体、分岐HUB、設置工事)は448,000円(税別)で、保守は任意契約として年額50,000円(税別)で提供しています。標準構成にAIによる文字起こしや要約機能は含まれていません。2026年7月に提供を開始した製品であるため、単独での導入社数は公表できる段階にはありません。通話を残すだけであれば電話機側の録音機能で足りるケースも多く、当社はそのような顧問先に本装置を勧めることはありません。機器の接続可否は電話環境に依存するため、顧問先へ案内する前に次の5点を確認します。導入の可否や効果は、導入前に対象を絞った録音確認を実施して判断します。

  1. 電話の収容方式はどの方式か(ひかり電話、SIPトランク、IP-PBX、クラウドPBX、アナログ回線の別)。
  2. PBXと通信キャリアの間に、ミラーポートを設定できるネットワークスイッチや分岐HUBを物理的に挟める場所があるか。
  3. 通話音声の通信が暗号化(TLS/SRTP)されていないか。クラウドPBXやスマートフォンの内線機能では暗号化されているケースが多く、音声を取り込めない環境があります。
  4. 録音の対象範囲は、代表番号にかかってくる外線通話だけか、それともすべての内線通話を含むのか。
  5. 通話開始時に録音の事前告知ガイダンスを流したいか。流す場合、既存のPBXに自動音声応答機能が備わっているか。

電話基盤そのものを録音機能内蔵型へ刷新したい場合は、姉妹製品である「VoiceLine PBX」が選択肢となります。製品の詳細、価格、法務文書は RecordingBOX 紹介・提携をご検討の方へ → で公開しています。

6. 協業の前提

当社と組む場合の前提

当社が社労士や専門家の方と協業するにあたっては、社会保険労務士法第23条の2(非社会保険労務士との提携の禁止)、第27条(業務の制限)、第16条(信用失墜行為の禁止)、および社会保険労務士法施行規則第12条の11(業務の公正保持等)の趣旨を踏まえ、次の前提を定めています。個別の事案への適合性については、所属される社会保険労務士会の見解に基づきご確認ください。

  • 商流は紹介・取次型とし、製品の売買契約は当社と事業者(顧問先)との直接契約となります。見積提出、契約締結、納品、保守対応はすべて当社が行い、社労士が契約当事者になることはありません。
  • 当社から社労士に対する紹介手数料等の対価は原則として設けていません。対価を設ける運用を行う場合は、社労士が顧問先に対してその事実を開示できる形式で別途合意します。
  • 社労士から当社に対して支払われる金員は、名目を問わず一切受け取りません。
  • 顧問先の紹介は双方の自由な判断に基づいて行い、相互紹介の義務付けや紹介件数の取り決めを設定することはありません。
  • 当社は、労働社会保険諸法令に基づく各種申請書類の作成や提出代行、就業規則・社内規程・対応マニュアルの作成業務を行いません。規程・マニュアル・相談体制・研修の設計は社労士の業務であり、当社は機器・録音環境の提供と製品説明に専念します。
  • セミナー等を共催する場合、法令や指針の解説は社労士が担当し、製品機能や技術仕様の説明は当社が担当します。
  • 当社のウェブサイトや販促物に、社労士の事務所名や氏名は掲載しません。
  • 顧問先の連絡先情報を社労士から当社へ提供することは求めず、相談を希望される顧問先自身が当社の窓口へ直接問い合わせる手順を基本とします。

7. 資料と相談

資料と相談

顧問先との初期の認識合わせにお使いいただける「カスハラ対策における通話録音の位置づけ」(全14枚のPDF)をご用意しています。法令の位置づけ、東京都実態調査の数値、規程と機器の分担、AIにデータを渡すことの意味、対象となる事業者の層、協業の型を、一次資料の出典付きでまとめた資料です。事務所名、氏名、メールアドレスをご入力いただくと、その場でダウンロードできます。

個別の業務提携に関するご相談や、顧問先向けのセミナー共催に関するご相談は、お問い合わせフォームから受け付けています。

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認識合わせ資料(PDF・14枚)

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