「言い方はきついけれど、要求自体はもっともかもしれない」「これはもう、ただのクレームではない気がする」——電話の現場では、目の前の対応がカスタマーハラスメント(カスハラ)に当たるのか、その場で判断に迷う場面が少なくありません。

この記事では、カスハラかどうかを見分けるための3つの基準と、電話で起きやすい典型的な言動の例を整理します。あわせて、正当なクレームとの違いや、記録を残しておくべきケースについても触れます。

カスハラを見分ける、3つの基準

厚生労働省の考え方では、カスタマーハラスメントは「顧客等の言動のうち、社会通念上許容される範囲を超えたものにより、労働者の就業環境が害されるもの」と整理されています。個別の事案がこれに当たるかは、おおむね次の3つの要素から総合的に判断されます。

  1. 要求の内容に妥当性があるか — 事実誤認や、そもそも自社に非のない言いがかりではないか。
  2. 要求を実現するための手段・態様が相当か — 暴言・威圧・長時間の拘束・土下座の要求など、社会通念に照らして不相当でないか。
  3. 就業環境が害されているか — 担当者が精神的な苦痛を受け、通常の業務に支障が生じていないか。

ここで大切なのは、要求の内容が正当でも、手段や態様が不相当であればカスハラに当たり得るという点です。「言っていることは正しいから我慢すべき」とは限りません。

電話で起きやすい、6つの型

電話の現場では、次のような言動が繰り返し見られます。自社の状況に当てはめて確認してみてください。

典型的な言動録音があると
暴言・人格否定「お前じゃ話にならない」「辞めさせろ」言動の事実を、担当者の主観に頼らず確認できる
長時間拘束同じ主張を繰り返し、終話に応じない通話時間と経緯が残り、終話・上長交代の判断材料になる
過剰要求返金・金品・特別対応を執拗に求める要求内容を記録として保全し、組織で線引きを判断できる
脅迫・示唆「本社に言う」「SNSに晒す」「家まで行く」関係機関へ相談する際の事実確認材料になる
謝罪強要土下座・書面謝罪・担当者個人の謝罪を求める個人の謝罪要求を、組織の対応に引き上げる起点になる
反復架電複数回線・複数担当へ繰り返し接触する横断的に記録が残り、組織として全体像を把握できる

それぞれの型のくわしい解説は、カスハラの型図鑑にまとめています。

正当なクレームと、カスハラの違い

正当なクレームは、事実にもとづく改善・対応の要望であり、目的が問題の解決にあります。手段や態様も、社会通念上許容される範囲にとどまります。

一方カスハラは、要求内容の妥当性にかかわらず、手段・態様が不相当で、結果として労働者の就業環境を害します。両者は地続きで、はじめは正当なクレームでも、対応の途中でカスハラに転じることもあります。

大切なのは「客か、カスハラか」を一刀両断することではなく、手段・態様が一線を越えたかどうかを、組織として一貫した基準で見ることです。

迷ったときは、「これってカスハラ?」30秒セルフチェックで、当てはまる項目を確認してみてください。2つ以上当てはまる場合は、記録・共有・上長対応の対象として検討するラインです。

記録を残しておくべきケース

次のような場面では、担当者ひとりの記憶にとどめず、記録として残すことを検討してください。

  • 暴言・人格否定や、担当者個人への攻撃が始まったとき
  • 同じ主張が繰り返され、終話に応じてもらえないとき
  • SNS投稿・来訪・通報などの示唆があったとき
  • 担当者が「一人で抱えている」と感じたとき

記録は、被害を個人の記憶に閉じず、会社が確認・判断・対応するための材料になります。ただし、録音だけで保護が完結するわけではありません。相談窓口・配置判断・再発防止とあわせて運用することが前提です。録音が現場をどう変えるかは、録音という対策でくわしく解説しています。

まとめ

  • カスハラかどうかは、①要求内容の妥当性 ②手段・態様の相当性 ③就業環境への影響の3つから総合的に判断する。
  • 要求が正当でも、手段が不相当ならカスハラに当たり得る
  • 正当なクレームを排除するためのものではなく、一線を越えた言動を組織として確認・対応するために、記録を活用する。

なお、2026年10月からは改正労働施策総合推進法により、事業主のカスハラ対策が義務化されます。詳しくは法令・義務化もあわせてご確認ください。